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安定的な成長・持続型社会の実現に向け,福島県においても環境保全の重要性はますます大きくなってきています. 我々は,猪苗代湖に代表される多くの湖沼における水質環境保全に資するため, そしてセンシング情報の高次活用に基づく新たな産業基盤の育成を目指し, 新しい概念に基づく水質センシング技術およびそのシステム化技術の研究を開始しました.

猪苗代湖の湖水の水質は良く,過去に4年連続で水質日本一になったことがあります. また,明治時代に大きな工事をし,郡山市までひかれた疎水は「安積疎水」といい,日本三大疎水の1つと数えられています. 安積疎水は現代でも飲料水や工業用水などとして用いられています. しかしながら,近年北部領域の水質汚濁が問題となってきています.

生活雑排水および産業・農業系排水の流入が水質汚濁の原因であると言われています. これらの排水により窒素化合物やリンの濃度が上昇し,pH値が上昇することや水の富栄養化が起きます. また,濁水により水生生物への影響があります. 水草等の光合成を妨げることや,魚が窒息することなどが起きます. 水質改善のためには,汚濁のメカニズムを解明する必要があります. そのため,日本大学工学部では中村,藤田,長林および若林など多数の研究者による研究が進められてきました.

ところで,水温や水の流れの調査は継続することが重要です. これには多くの人員と労力が必要になります. また,猪苗代湖は面積が国内第4位と広く,全体の調査を行うことが困難です. 現在では定期的に人の手により調査が行われていますが, 限定された領域を,期間をあけて調査しています. そこで我々は継続的な調査が可能なシステムの開発が必要であると考えました.

本研究で提案するシステムは,多数の再生可能エネルギ駆動型ノマド・センシングデバイスと環境計測用自立型移動ロボット, 見える化サーバにより構成され,各種端末からWebブラウザを用いてサーバにアクセスすることにより, 猪苗代湖の水質や温度,水流などの情報が閲覧できることを目指します. これにより,連続的かつ他点同時に情報を得ることが出来,水質汚濁メカニズムの解明に寄与できると考えています.

センサデバイスは長期に渡り,湖水情報を取得しデータを送信し続けることを想定しています. そのため,バッテリなどに駆動エネルギを頼ることができません. これに対して,本研究では太陽光や風力などの自然エネルギからエネルギを採集し駆動する, エネルギ的に自律したセンシングデバイスを提案しています.
また,提案するセンサデバイスは「ノマド(遊牧民)」という名前がついているとおり, 決められた位置を計測するのではなく,湖の流れに身を任せて移動します. この形態を採用することにより,移動機構やその為のエネルギが必要なくなるという利点があります. これに加えて,位置情報を記録しておくことにより湖水の表層の流れを記録することが出来ます.

センサデバイスには, 湖沼の環境基準を参考にし,水温,pH値,溶存酸素量を計測するためのセンサを搭載します. また,水の透明度や浮遊物質を知るためのカメラや, 環境の状態を知るために,気温,風向風速,流向流速なども計測可能にします.
このデバイスを複数個作成し,湖の数カ所に放流し,データを取得します. 多点を連続的に計測できるということは,人の手による調査にはできないアドバンテージがあると考えています.

計測したデータをインターネットを通して閲覧可能にすることを目指します. 具体的には一般的なブラウザなどから閲覧できるようにし,一般公開を行います. このページでは,地図上に水質や温度の情報などを「見える化」するために,インタラクティブなデザインとし, 視覚的に猪苗代湖の状況を捉えることができることを目標に開発を行っています. 研究は緒についたばかりですが,今後の進捗については本ページにて随時発表していく予定です.

猪苗代湖の現状を知るために,実際に実地に赴き,藤田らの調査活動に参加するなどしています. ここで得られた知見を活かして,システム開発に励んでいます.




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日本大学工学部機械工学科サステナブルシステム研究室(柿崎・遠藤研究室)