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この研究では介助者環境を支援する,ロボットを用いたサポートシステムの研究開発を行っています. 要介助者を取り巻く環境は要介助者の状態により大きく変わります. ここでは,下肢不自由者や怪我人などの意識がはっきりしているが,ベッド上などの限られた空間での生活を余儀なくされている人を対象としています.

要介助者は,生活のフィールドや可能な動作が限定されているため,生活に介助者の支援が必要です. この支援には様々な性質のものが考えられます. 離床や排泄,入浴などの複雑で力がいるような作業から, ものを取る,電気をつけるなどの単純で簡単な作業まであります. この中でも後者に焦点を当てて研究開発を行っています. 我々の狙いは,支援内容を限定することにより,要介助者自身が操作する簡単なシステムによってライフサポートを実現することです. このシステムでは離床や排泄などの作業は介助者に依存することになりますが, 介助者に支援を依頼するほどで無い単純で簡単な作業は,要介助者自身によりロボットを使って実行できるようになります.

このシステムで簡単な作業を支援することにより,介助者はそれらの作業から解放されます. 一方で,要介助者は後回しにされがちな簡単なことを,自分の望んだタイミング行えます. 加えて,今まで人に依存しないと出来なかった簡単な作業を自分自身でできるようになるため, 自立性が向上し,QoLの向上につながると考えられます. これにより,介助者と要介助者の関係性や,要介助者の心の健康を持続可能にするだけでなく, 前向きになるため,身体的健康も改善していくことが望めると考えています. これはロハスな生活を手に入れるためにシステムであると言えます.

これを実現するために,この研究で提案するシステムは直感的インタフェースとライフサポートリアリティサーバ,物理エージェントという3つのシステムモジュールから構成されます. 具体的にはユーザ(要介助者自身)が直感的インタフェースに支援内容を入力し,それを物理エージェントと呼ばれる移動ロボットが実際に実行し,支援を実現するシステムです.

物理エージェントはシステムにおいて実際に支援を実現するモジュールです. これは移動ベースに家電や住設機器を操作するデバイスを搭載したロボットです. システムが支援可能なタスクを限定することにより, 物理エージェントの実行可能な動作を減らすことができます. これにより低コスト,省資源を実現します.

移動ベースは住環境という限定された空間を動き回るために,小型の全方向移動機構となっています. 具体的には500x500[mm]の範囲に収まるように設計されたラック構造であり, 操作デバイスの増設などを見越した設計になっています. また,全方向移動機構はオムニホイールと呼ばれる特殊な車輪により実現しています. 住環境内で安全に動作できるようにカメラやレーザーレンジファインダ,サウンドセンサなどの様々な外界センサを搭載しています.

この研究では,要介助者自身をユーザとし,ユーザ自身がシステムを操作することを前提としているため, 操作者が機械操作に長けているとは限りません. そのため,ユーザが極力簡単にシステムを操作できるようにするインタフェースの開発を行っています. 具体的には小型デバイスに押す,上げる,回す,ねじる,振るなどの基礎動作を入力することにより操作を実現するものです. 複雑な操作やボタン操作,操作のためのルールを用いないことにより,機械操作に疎いユーザも安心して使用できるインタフェースを実現します.

現在では,OSにアンドロイドを採用している小型情報端末(いわゆるスマートフォン)をデバイスとしてインタフェースの開発をしています. アンドロイドは多様なセンサをサポートしており,ほとんどのアンドロイド端末にはそれらがプリインストールされています. そのため,ソフトウェアの流用性や流通性から,アンドロイド端末での開発を選択しています. 現状としては基礎動作を認識するベースシステムを開発し,物理エージェントと統合することに取り組んでいます.

直感的インタフェースに入力された支援内容を受信し,物理エージェントに送信するサーバがライフサポートリアリティサーバです. ユーザが要望する支援内容と,ロボットが動作できる運動は必ずしも対応しているわけではありません. そのため,ユーザが入力した支援内容を,ロボットが実行できる動作群に変換した上で,ロボットに送信する必要があります.

また,ユーザが望む支援内容のなかで,提案するシステムで実現できる/実現すべきものかどうか判断し,出来ないものであれば介助者を呼ぶなどするシステムも搭載していきます. このため,ユーザが望む支援内容を明確化する必要があるため,介護福祉現場の意見を取り入れつつ研究を進めています.


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日本大学工学部機械工学科サステナブルシステム研究室(柿崎・遠藤研究室)